皆さんは歯科医師とその病院の関係者が入ることができる「歯科業界特有の健康保険」があるのをご存知でしょうか。
歯科医師国民健康保険といい、通称「歯科医師国保」と言われています。
この歯科医師国保、実は普通の健康保険とは少し違うところがあります。
今回は歯科医師国保について詳しく説明していきます。
歯科医師国保は「どういうものか」「どんなメリットやデメリット」があるのかを一緒に確認していきましょう。
目次
歯科医師国保とは?
歯科医師国保とは「歯科医師国民健康保険組合」のことです。以降は歯科医師国保と記載します。
歯科医師国民健康保険組合に加入している人が受けられる医療保険制度(もしくは国民健康保険)のことを一般的に歯科医師国保と言います。
ちなみに歯科従事者が加入できる健康保険は3種類あるんですよ。
歯科従事者が加入できる健康保険【3種類】
歯科従事者が加入することができる公的医療保険は下記3種類です。
歯科医師国保
国民健康保険
健康保険のことは、協会けんぽとも言われます。
今回ご紹介する歯科医師国保は、国民健康保険の一種です。
この歯科医師 国保は、各自治体の歯科医師国民健康保険組合や全国歯科医師国民健康保険組合が運営しています。
被保険者 | 運営主体 | |
健康保険(協会けんぽ) | 健康保険の適用事業所で働く人とその家族 | 都道府県協会けんぽ |
歯科医師国保 | ・各府県の歯科医師会の会員である歯科医師とその家族
・歯科医師会の会員である歯科医師が開設・管理する診療所に勤務する人とその家族 |
市区町村 |
国民健康保険 | その他の公的医療保険に加入していない地域住民 | 市区町村 |
勤務先の歯科医院の所在地により加入できる組合が変わり、保険の内容も異なります。
例外:東京都
東京都には「歯科医師国保」がなく、「東京都歯科健康保険組合」という、東京都歯科医師会および東京都内にある郡市区の歯科医師会、歯科診療所で働く人たちを対象とした健康保険があります。
そのため、健康保険というと「協会けんぽ」か「東京都歯科健康保険組合」のどちらかになります。
健康保険ではない場合は各自治体の国民健康保険ということになります。
歯科医師国保にもいくつか種類がある
歯科医師国保の被保険者(加入者)にはいくつかの種類があります。
※被保険者とは、組合員及びその世帯に属する者のことを言います。
歯科医師国保の場合、歯科医師は「1種組合員」と「2種組合員」と「家族」の3種類に分けられます。
・2種組合員…1種組合員である歯科医師が開設または管理する診療所に雇用される歯科医師で、規約の地区内に住所を有するもの
・家族…同一世帯に属しているもの
詳しくはこちらをご参照ください。
全国歯科医師国民健康保険組合
歯科医師国保と健康保険の違いは?
ここまでは歯科医師国保に注目してご説明してきました。
今度は歯科医師国保と健康保険(協会けんぽ)、国民健康保険の具体的な違いを見ていきたいと思います。
給付内容が違う
歯科医師国保と、健康保険(協会けんぽ)、国民健康保険では給付内容が異なります。
死亡に対する給付 | ケガ・病気に対する給付 | 出産手当 | 出産育児一時金 | 産休中の保険料免除 | |
健康保険 (協会けんぽ) |
〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
歯科医師国保 | △ | △ | ✕ | 〇 | ✕ |
国民健康保険 | ✕ | ✕ | ✕ | 〇 | ✕ |
表を見ると、健康保険(協会けんぽ)に比べて給付内容が薄いかもしれません。
しかし、組合によっては健康保険(協会けんぽ)と同じような給付が受けられるところもあります。
また健康保険(協会けんぽ)とは違い、各組合によって保健事業と呼ばれる福利厚生を用意しているところがあります。
保健事業の内容ですが、健康診断や予防接種・人間ドックなどの健康増進に関わるものが主になります。
地域によっては、医療費の負担が2割になったりするところもあるので、どのような内容があるのか確認してみましょう。
保険料が違う
加入している歯科医師国保の組合によって保険料が異なりますが、1人当たりの保険料額は一定額に決まっています。
歯科医師国保の保険料の内訳
後期高齢者支援金分保険料
介護分保険料(40歳以上の被保険者)
では、実際に月々どれくらい保険料がかかるのか見ていきましょう。
神奈川県歯科医師国民健康保険の保険料の場合
算定例:勤務医・35歳の保険料
健康保険料:合計23,700円
健康保険(協会けんぽ)の場合
健康保険の場合は、個人単位での年齢や収入などによって算出されます。
保険料率は各組合によって異なります。
算定例:月収50万円の35歳 勤務医(神奈川県)の場合
健康保険料:24,825円
扶養という概念の有無
歯科医師国保では扶養という概念がありません。
そのため世帯主が歯科医師国保に加入している 配偶者やお子様がいる場合、健康保険(協会けんぽ)に加入しているときよりも負担が増えてしまうことがあります。
勤務医45歳・家族3人(妻43歳・子供2人)の世帯の場合の保険料を比べてみましょう。
神奈川県歯科医師国保の場合の保険料の例
家族(妻):医療分8,000円+後期高齢者支援金分2,600円+介護分4,500円
家族(中学生):医療分8,000円+後期高齢者支援金分2,600円
家族(小学生):医療分8,000円+後期高齢者支援金分2,600円
健康保険料:合計65,600円
健康保険(協会けんぽ)には扶養という考え方があり、収入額に応じて保険料が決まります。扶養している配偶者やお子様の人数に応じて健康保険料が変わるということはありません。
例えば月収50万円とした場合、値する等級の保険料に40歳以上なので介護保険料率が加算された額になります。
妻や子供には収入がないため扶養控除の対象になり、45歳勤務医の保険料が世帯全体の保険料ということになります。
健康保険(協会けんぽ)の保険料の例
妻:0円
子供(2人):0円
健康保険料合計:28,750円
比べてみると、扶養の概念がある健康保険(協会けんぽ)のほうが、負担する保険料が少ないことがわかります。
注意点
歯科医師国保のデメリット
歯科医師国保のデメリットは、自身が勤める歯科医院では保険証を使用することができないことです。
そのため、自身が勤める歯科医院で治療をしてもらう場合、自費になってしまうので、材料費くらいの費用で治療してもらうなど、歯科医院独自の優遇措置が行われているところが多いようです。
また健康保険(協会けんぽ)の場合は、保険料を歯科医院と折半します。そのため実際の負担額は半額になります。
しかし、歯科医師国保には勤め先が保険料を負担する義務がありません。
歯科医師国保と求人情報に記載があった場合には保険料を半額負担してくれるのかを確認したほうがいいでしょう。
歯科医師国保って入ったほうがいいの?
では歯科医師国保のプラスに働く面とマイナス面を含め、実際に一般的な健康保険と歯科医師国保を比べたときにどちらが得でどちらが損になってしまうのかを考えてみましょう。
健康保険と歯科医師国保の場合、どちらが得なのか
歯科医師国保と健康保険のどちらが得なのかはケースバイケースと言われています。
歯科医師国保の保険料が加入している組合によって違うことを説明しました。
しかし、実際どちらの保険料が得かと言うと計算をしてみなくてはわからないのが現状です。
ただし、家族をたくさん扶養している場合は健康保険がお得で、一人暮らしや賃貸住まいの場合は歯科医師国保のほうが得な面もあると言われています。
健康保険には病気やケガによる治療のために仕事を休んだ際の「傷病手当金」や産休育休時の給付があります。
具体的に出産の予定がある場合は、健康保険のほうが手厚い給付を受けられるでしょう。
反対に、女性歯科医師でも出産・育児を終えたり、給付は必要ないという方の場合は歯科医師国保でも十分かもしれません。
まとめ
歯科特有の歯科医師国保ですが、各地の歯科医師国民保険健康組合によってその保険料も保険の内容も違います。
加入する際にはその歯科医院が加入している歯科医師国保の内容を確認しましょう。
また、時には健康保険を選ぶという選択肢も視野に入れて考えてみるのも必要かもしれません。
シカカラDr求人では、「社保完備の求人がいい」「手取り●●万円以上がいい」など、ご希望に合わせて求人をお探し致します。
ミスマッチがないよう、ひとりひとりお話をお聞きしておりますので、お悩みの方はキャリアアドバイザーにご相談ください!