勤務医や開業医の皆様はご存知の通りでしょうが、学生の方にはまだ接する機会が少ない「歯科医師会」。
ここでは、歯科医師会についての基礎知識と加入する際のメリット・デメリットをご紹介します。
目次
歯科医師会とは
歯科医師会とは、歯科医療従事者が会員となり組織される国民への歯科に関する予防、啓発活動などを主な事業とする公益法人です。
活動目的は歯科医療従事者に対する歯科技術、知識の研修、歯科医療学術の発展や啓発、各自治体と協力して歯科に関する衛生事業や「8020運動」に代表される啓発事業を主として活動している団体で、歯科医療従事者が任意で加入することができます。
連携する3つの歯科医師会
「歯科医師会」は3つに分類されており、それぞれが密に連携を取り合い、大きな県レベルの活動から小さな地区レベルまでに渡り歯科保健活動、歯科啓蒙運動を行っています。
- 日本歯科医師会:歯科医師会を統括する組織
- 都道府県歯科医師会(例:東京都歯科医師会、大阪府歯科医師会)
- 都市区医師会(例:東京都世田谷区歯科医師会)
歯科医療従事者に対しての活動
歯科医師会の歯科医療従事者に対しての活動は、歯科医師としての在り方から始まり、最新歯科医療情報の提供、各種セミナー、医学講習会、臨床研究始動、国際的歯科業界との交流、会員歯科医師の親睦会など多岐に渡ります。
最近の活動の中でも特に注目したいのが、「日本歯科医師会」HP内で、女性歯科医師がいきいきと働くために、短期から長期まで全国の歯科医療機関の情報の掲載をスタートしたことです。
歯科医界のさらなる発展にむけて、育児休暇等で一旦離職してしまった女性歯科医師に対して更なるキャリア形成や、多様な働き方を支援する活動です。
強制加入?歯科医師会加入のメリット、デメリット
こうした様々な活動を行っている「歯科医師会」。
全ての歯科医療従事者が加入する必要があるかといえばそうではなく、任意加入となっています。何故任意加入なのでしょうか?
まず、歯科医師の資格の登録、剥奪等の管轄をしている組織は厚生労働省です。
つまり、歯科医師を管理する団体は厚生労働省ということになります。
では歯科医師会の統括団体である「日本歯科医師会」の位置づけはというと、歯科医療の発展、普及、行政と連携を取り、地域での活動などを行う為の「学術団体」にあたります。
他の職業での例を挙げると、同じ職能団体である日本弁護士連合会(日弁連)では弁護士の資格の登録、剥奪等の管轄を行っており、全ての弁護士は日弁連に強制加入する事になっています。
あくまで「学術団体」という位置づけの「歯科医師会」に加入するかどうかは歯科医院、歯科医師自身の判断に委ねられています。
では「歯科医師会」に加入するとどのような恩恵があり、どのような手続きが必要なのでしょうか?
歯科医師会に加入するには
「歯科医師会」に加入するということは基本的に「日本歯科医師会」「都道府県歯科医師会」「都市区医師会」の3つの団体全てに加入することを言います。
まずは、就業歯科医療機関等の所在地の「都市区医師会」「都道府県歯科医師会」に入会します。
その後、「都道府県歯科医師会」を介して「日本歯科医師会」へ入会します。
また、歯科医師会への入会には、入会金と年会費が発生します。この会費は3つの団体全てに個別に払う必要があります。
歯科医師会に加入するメリット
「歯科医師会」に加入すると、どんなメリットがあるでしょうか?
・研修やセミナーが受けられる
定期的に開催される歯科研修会や学術講演会などに参加することができます。
・保険診療に関する最新情報を提供してもらえる
最新の保健診療情報、医療関係法令等の情報を会誌、メールマガジン、会員専用ウェブサイトで受け取ることができます。
・地域の交流や他の歯科医院の情報交換が増える
定期的に都市区歯科医師会との交流会があり情報交換ができます。
・歯科医師国民健康保険組合に加入できる
歯科医師国保に加入することができます。そのため、所得に関わらず、一律の金額を納めるため、所得によって増減する健康保険より、納める保険料が少なく済む場合があります。
また、被保険者のために、福利厚生も用意しています。内容は健康診断、予防接種や人間ドッグなど、健康増進のものが中心。各組合によっては、ホテルの優待券や旅行プランの割引が受けられます。
・検診など国から仕事の依頼がくる
無料検診や学校医、妊婦検診など行政の検診業務を受け持つことができます。
歯科医師会に加入するデメリット
・入会金や年会費がかかる
まずはなんと言ってもお金の問題です。
3つの団体にそれぞれ入会金と年会費、地区によっては入会時負担金、医療機関会費なども必要になり、年会費は就業歯科医院、医療機関等の所在地によって異なりますが、少なくとも年間100万以上、多い場合は500万程かかる事もあります。(第一種会員と第二種会員で金額に差があります。)
次によく言われるが休診日や診療時間です。
歯科医師会加入医院では、皆で足並みを揃えているため、地区歯科医師会の方針に従うことが多いようです。
時には医院名にその地区の名前をいれてはいけないなど地区医師会にしかないお約束もあるようです。
まとめ
「歯科医師会」の活動、加入のメリット、デメリットをまとめてみました。
勤務医の方は、セミナー・研修会への参加や歯科医師国保加入の面でメリットを感じる方が多いようです。
気になった方は、就職先を選ぶときに歯科医師会に加入している歯科医院か確認してみるといいでしょう。