白金こどものはいしゃさん
院長:園延妙子先生
ご自身の子育てでの悩みから「キッズコーチング」を学ぶ。
子供との関わり方に活かす他、お母さんに向けた講座を開いてキッズコーチングを広めている。
子供が苦手…
泣かれるとどうしていいかわからない…
親御さんの視線に緊張してしまう…
そんな歯科衛生士さんもいらっしゃると思います。
今回は、「キッズコーチング」という考え方を基本にした子供との関わり方をされている、小児歯科の院長先生にお話をお伺いしました!
私たち大人が、子供をコントロールしないといけない、と思ってしまっていませんか?
目次
幼少期からの予防のため「楽しく、通いたいと思える歯医者」に
-白金こどものはいしゃさんで大切にされていることは何ですか?
患者さんに楽しく予防してもらうことですね。
患者さんって、虫歯なんかで歯がボロボロになってからいらっしゃる方が多いんです。
そして治療が終わったらまたひどくなるまで来ない、の繰り返し。
そういうことが残念だなと思ってたんですね。
歯医者から足が遠のく根本的な問題ってなんだろうと思ったときに、子供のころに痛い・怖い思いをして歯医者が嫌いになっているんじゃないかなと思ったんです。
幼少期から予防をしっかりしていれば、予防のために歯医者に通う習慣がつきますよね。
予防しているから虫歯などひどい状態にもならないし、そうすれば歯医者を怖く思うことなない。
当院では0歳から予防を始めているんですが、そこでは母子感染についての知識やお母さんの口腔内の状態を知ってもらうようにもしています。
お子さんはもちろん、親御さんのモチベーションもあげられるようなコミュニケーションを心掛けていますね。
医院理念の1つに「笑顔でお迎え、笑顔でバイバイ」というのがあり、来た時と帰るときは笑顔になれるように徹底しています。
予防のためにも、子供のころから「歯医者は楽しいところだ」って思ってもらえる歯科医院でありたいですね。
-実際に「楽しい歯科医院」であるためにどんなことを気を付けていますか?
初回にいきなり治療をしないことですね。
当院では、初回はカウンセリングと唾液検査で、まずは歯医者に慣れてもらうようにしています。
雰囲気作りだけではなくて、患者さんの負担を軽くするためにも手早くすませること。
2回目に治療の説明をして、治療に入っていくんですが、トレーニングからはじめるようにしています。
-トレーニングとはどういうことから始めるんですか?
まずは診察台に寝るところから、とか、本当に初歩的なことからですね。
はじめはお母さんでさえ、お子さんにはできないと思っていることもあるんです。
それを「自分で寝れたね、すごいね」と1つ1つ認めてあげることで、自信がついていくんです。
キッズコーチングで言うところの「スモールステップ法」ですね。
子供との関わり方に活かす『キッズコーチング』を取り入れた診療
-キッズコーチングとは?
日本の教育はティーチングが主流で、「こうしなさい」と「教える」ものが多いですが、キッズコーチングでは「子供がどうしたいと思っているか」を大事にします。
こちらから押し付けるのではなく、子供のやる気を引き出すような関わり方なんです。
-年齢に合わせて関わり方がかわるんですか?
年齢に合わせた関わり方と、その子の気質に合わせた関わり方があります。
そのうち年齢的な成長に合わせたものを「セブンステップコーチング」と言います。
0~6歳の心の成長を段階的にとらえて、この年齢ではこういうことを大事にしましょう・こういうことを育んでいきましょう、というステップに分けられています。
身体的な成長は目に見えるけど、心の成長は目に見えないので、年齢に合わないことを求めてしまいがちなんです。
例えば、2歳の子に「思いやりを持ちなさい」と言っても理解できないのに、「すぐにお友達を叩いて、この子は乱暴な子かも」という決めつけをしてしまったり、落ち込んでしまうということがあります。
でも、2歳は好奇心や集中力を育てる時期なので、どちらかというと自由な空間自然遊びをさせてあげるのがいい、ということを知っていると子供の見方が変わってきます。
親御さんの気持ちもかわりますし、スタッフもこの考え方を知っていると無理なことはさせなくなります。
-気質に合わせた関わり方というのは?
「キャラクターコーチング」といいます。
性格というのは、気質と環境の影響が半々だといわれているんですね。
みんなに画一的なことを求めるのではなく、ひとりひとりのペースに合わせる。
もともとおとなしくて人見知りな子には「明るく社交的になりなさい」と言うよりも、その子の気質に合う環境・対応にすることでその子の長所を伸ばしていくという関わり方になります。
自分だけが知っているのではもったいないという思いから、医院で取り入れ、お母さん向けの講習を開くことも
-ご自身がキッズコーチングを学ぼうと思ったきっかけについて。学んでどう変わりましたか?
子育てで辛いことがあって変わりたいと思ったときに出会ったのがキッズコーチングでした。
自分の子供が、自我ができてきた2~3歳のころ、言うことを聞いてくれなくなってきたことにイライラしてしまって。
自分も辛かったですし、子供にも悪いなと思っていたんです。
キッズコーチングを学んだことで、それまで悩んでいた子供の行動に対する捉え方が変わりました。
気持ちが楽になりましたね。
-スタッフの方もキッズコーチングの考え方を意識されているんですね。
スタッフには、毎月スタッフ全員が揃うミーティング日があるので、そこでレクチャーしていますね。
自分が知っているだけではもったいないと思ったので、今ではお母さん向けに講座を開いたりしてキッズコーチングを広める機会を作っています。
キッズコーチングを知ることで、気持ちが楽になったり、子育てが楽しいと思えるようになってもらえたらなと思いますね。
子供の心に寄り添うことを大切に。小児科で働く歯科衛生士さんへ。
-歯科衛生士さんに大切にしてもらいたいことは何ですか?
当院の場合は、方向性として、子供が自分から楽しく通いたいと思える環境にしたいという話をしています。
そのために、子供の心に寄り添った会話とトレーニングを大切にしてほしいと思っています。
どうしても治療を進められない子や、反対にすぐに治療をしないといけない場合は、親御さんにきちんと説明することですね。
-歯科衛生士さんにはどんな役割を求めますか?
患者さんが自分でケアをしようと思えるように、子供の場合は親御さんが家でもケアを気をつけようと思えるように、モチベーションを上げる、維持できるようにすること、ですね。
TBIをしたけど続けてくれない、などというのはこちらの思いが伝わってないからだと思うんです。
もしくは、一生懸命やっていてもコツや何を使えばいいかわかってないから成果が出ていなかったり。
なので、具体的に「ホームケアではこういうことをするといいですよ」とか「これを使うといいですよ」という話までできるといいですね。
そして、次に来院されたときに「ちゃんと続けてくださってるんですね」などの声掛けをすることで、モチベーションを上げていけると思います。
自分がお口の健康を守っているんだというプロ意識を持ってほしいですね。
-どうすることでプロ意識を示せると思いますか?
患者さんが自分でケアを続けてくれなかったとしたら、改善されるまで工夫するというように、患者さんに責任を持つことが大切かなと思います。
「説明したけど伝わらない」ではなく「伝わるまで説明したり説明の方法を工夫する」ことです。
改善につなげてこそプロだと思います。
きちんと患者さんに伝わっているか把握して、結果を受け止めたうえで、いろいろな方やケースに対応できるように成長することが大切なのではないでしょうか。
子供のこと、親御さんのこと、周りのスタッフのこと…いろいろなことを考えてくれている歯科衛生士:杉山さん
-杉山さんはどんな方ですか?
とても努力家です。
日々成長しようと頑張っているのがわかりますね。
前職は小児歯科専門ではなかったので、はじめは苦労もあったと思いますが、そこを乗り越えて今は子供と楽しく診療することを実現してくれています。
当院に来て、いろいろ吸収して、よくなろうと頑張ってくれています。
-面接から、そんな感じはしていましたか?
面接での印象は、明るく前向きな雰囲気でしたね。
話を聞く姿勢はもちろん、自分で考えて自分の言葉できちんと伝えようとしてくれるところに素直さと、頑張り屋さんなんだろうなと感じました。
面接で見るポイントは「本当にうちにあっているか」
-面接ではどんな点をみていますか?
まずは素直さですね。
あとは小児歯科専門ですから「本当に子供好きかどうか」です。
「好きなほうかな」くらいだと後々つらくなってくるだろうし、場合によっては「あなたなら一般歯科のほうがあってるかもね」という話もします。
親御さんとのコミュニケーションも大切なので、コミュニケーション能力も重視しています。
子供が好きなだけでは務まらないので、面接時はその方の本質が知れるようにいろいろな質問をしますね。
(右)歯科衛生士:杉山さん
子供が苦手だという歯科衛生士さんにアドバイス
「私がどうにかしないと」と思うのではなく、まずは子供の気持ちに寄り添ってみましょう。
怖がっていたら「こわいんだね」と共感して、相手の気持ちを認めてあげることで落ち着いてくれます。
「こわくないでしょ」と否定してしまうと、子供は「わかってもらえないんだ」と心を閉ざしてしまうので。
コントロールしようとすると、子供もコントロールされまいとしてしまうんですよね。
だから子供が自分から「やってみよう」と思えるようにするほうが効率が良かったりするんです。
例えば口の中を掃除するとき、使うのが綿球だとしても、何かわからないから怖がりますよね。
そこで「こわいんだね。でも見てみて?ふわふわだよ?ちょっと手にぽんぽんしてみようか」というように、一度口の外で見せることで「痛くなかったね。じゃあお口に入れてみようか」と進めていけるんです。
-親御さんの視線が怖いという人もいると思いますが、そういった場合はどうすればいいんでしょうか。
親御さんの視線を気にしてしまうと、子供の様子が見れなくなってしまうと思うんです。
そうすると尚更「ちゃんとしてくれない」と思われてしまいかねませんよね。
気になる気持ちも理解できますが、そこはとにかく目の前のお子さんに集中することですね。
あとは、治療の説明など親御さんとのコミュニケーションを丁寧に取ることが大切だと思います。
編集後記 黒田
子供との接し方がわからない、泣かれたらどうしたらいいかわからないという歯科衛生士さんもいると思います。
キッズコーチングの考え方を知っているだけでも、恐怖心を与えない対応がわかるのではないでしょうか。
また、今までは自分が悪いと思っていたことも、子供の捉え方が変わることで接し方がわかり、歯科衛生士としての自信にもつながっていくのではないかと思いました!
取材・文/シカカラ編集部 黒田
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