歯科衛生士インタビュー

歯科衛生士インタビュー訪問歯科診療/高輪会グループ

投稿日:2017年3月27日 更新日:

訪問歯科診療は口腔ケアだけじゃないこんなに奥が深くてやりがいのある仕事に、20代で出会えた幸せ

「正直、最初は外来から離れる不安はありました。歯科衛生士はスケーリングやSRPなどの技術スキルが求められることがあるので、感覚が鈍ってしまうんじゃないかと悩んだことがあります」

そう話してくださったのは、専門学校を卒業して4年間外来を経験した後、20代の若さで訪問歯科診療を中心におこなっている高輪会グループで働き始めた渡辺さん。
訪問歯科診療で働く楽しさ、やりがい、大変さや転職する際のコツなどをお伺いしてきました。

高輪会渡辺さん

 

■プロフィール
・歯科衛生士 渡辺 昭子さん
・歯科衛生士歴  17年(内ブランクが1年)
・出身校 東京都歯科医師会付属歯科衛生士専門学校
・おすすめの歯ブラシ タフト24
・保有資格  介護職員初任者研修
【経歴詳細】
専門学校を卒業後、一般歯科で4年勤務。
その後、歯科衛生士の仕事を離れ、介護職に転職。
歯科衛生士の仕事を離れた1年後、訪問歯科診療を行う高輪会グループと介護職のWワークで約8年間パートとして勤務。
現在は高輪会グループの社員で運営部の係長として勤務。

訪問歯科診療における歯科衛生士の業務内容について教えてください

主な業務は専門的な口腔ケアになります。
具体的には口腔清掃や義歯清掃などの口腔衛生管理と口腔機能を維持・改善するためのリハビリや訓練などを行います。ケアを行った後は、施設に提供するための記録を作成します。

他には診療補助もありますし、歯科医師と一緒に摂食嚥下機能の評価や食事評価なども行っています。

主な訪問先と1日の患者数を教えてください

高輪会での訪問歯科診療は老人ホームやグループホームなどの施設が9割、居宅が1割くらいで日によりますが、大体1日20~30名くらいの患者さんの診療を行います。

1日のタイムスケジュール(平均)を教えてください

7:00-------------------
・起床
8:00-------------------
・出勤
診療所に出勤、ケアスタッフも出勤します
8:05-------------------
・出発準備
ケアスタッフが往診車を点検し、1日の訪問予定先の患者様カルテや治療器材を往診車に積みます。
8:15-------------------
訪問先に出発します
9:00-------------------
・1件目の訪問先施設に到着。診療準備
Dr.、ケアスタッフと一緒にカルテ・治療器材を運び、診療の準備をします。
9:30-------------------
・診療開始
施設様からの申し送りなどを確認後、ケアスタッフが診療順に患者様を各お部屋から、診療場所へ誘導。
Dr.が治療、DHが口腔ケアをおこないます。
12:00-------------------
・診療終了
カルテ、申し送り書類を書き、施設スタッフの方に注意点等を説明します。
治療器材を片付け、往診車へ積込みます。
12:00~13:00-------------------
・休憩時間
お昼は車両によってバラバラですが、私はファミレスなどの外食で休憩をとります。
13:30-------------------
・2件目の施設に到着。午前と同じように診療します。
17:00-------------------
・施設から診療所に戻る
片付け、滅菌、翌日の準備をします。
18:00-------------------
・業務終了
20:00-------------------
・帰宅 TVを見たり、音楽を聴いたり、リラックスする時間を大切にしています。
24:00-------------------
・就寝

※平均的なスケジュールになります。

一緒に働くスタッフを教えてください

基本は1車両につき、歯科医師1名、歯科衛生士1名、ケアスタッフ1名の3名構成です。ケアスタッフは車の運転や荷物の積み下ろし、患者さんの誘導をするスタッフです。

1日40~50名の患者さんをみる時は、パートの歯科衛生士さんの人数を2~3名増やして、5名体制でいく時もあります。

スケーリング・SRPなどの業務はありますか?

歯石はハンドスケーラーや超音波スケーラーで除去します。

患者さんの全身状態や体調などもチェックして行いますのでSRPはほぼないですし、歯周病予防を目的にしていないので、細かい所まで歯石を取るなどの正確性は求められないですね。

また開口の保持が困難な方や嚥下機能が低下している方は歯石除去が困難なケースもあります。

訪問歯科口腔ケアグッズ

訪問歯科診療を受ける方はどのくらいの介護レベルの方がいらっしゃいますか?

老人ホームからグループホームまで訪問先の施設があるので介護レベルも施設によって変わってきますが、普通に会話ができる方から寝たきりの方、認知症の方まで幅広くいらっしゃいます。

患者さん1人あたりの治療時間はどのくらいですか?

診療内容にもよりますが、患者さんの体力的にも負担はかけられませんので15~30分以内です。

歯科衛生士が記録する書類はどのようなものがありますか?

歯科衛生士は居宅療養管理指導書】【訪問衛生指導指示書という記録を作成します。

内容は患者さんの口腔内の状態、指導した内容などを記入します。特に難しいものではなく、初めての方でも簡単に記入できると思います。

体力がないと難しいイメージがあるのですが、実際はどうでしょうか?

介護士の業務としっかり分かれているので患者さんの体位を変えたり、移乗させる事はしないため、体力をつかう事はないですね。

口腔ケアなどで中腰になる姿勢をとる時はひざをついて腰に負担をかけないように気をつけているので、腰痛などに悩む事もないですよ。

スタッフの年齢層を教えてください。

高輪会グループだと、育休産休明けの方や小さいお子さんがいる方でも働きやすい環境のため30~40代の方が多いです。
そのため6割ぐらいがパートの方になります。

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残業はありますか?(残業になる時はどんな時?)

個人の作業スピードによって変わってくるとは思いますが、少ない方だと思います。

正社員は器具の滅菌や片付け、翌日の準備などがあるので量が多い時は残業になる事がありますが、勤務時間内に終わる人も多いですね。

パートの方は片付けや事務作業などはしないので、残業になる事はまずないと思います。

有給休暇はとりやすいですか?また急な休みの時はどのような対応をしていますか?

事前に申請書を提出すれば休みがとれるので、有給休暇は取りやすい環境ですね。
体調不良などの急なお休みもパートの歯科衛生士さんが代わってくれます。

新卒から4年間外来で勤務されていたとの事ですが、外来のお仕事を離れたのはなぜですか?

私も幼くて未熟だったんだと思いますが、人間関係で負担を感じてしまい、外来の仕事から離れました。

歯科衛生士って復職もしやすいし、外来で働いている時にご高齢の方と話している時が楽しかったのもあって、興味がある介護職で一度、働いてみようと思ったんです。
歯科衛生士の仕事を辞め、介護職員としてデイサービスでのお仕事を始めました。

再び歯科衛生士のお仕事に戻ろうと思ったきっかけを教えてください。

デイサービスで働いている時に利用者さんの口腔内をみたり、歯科衛生士の経験がある事を知っている介護士さんやご家族の方から歯科に関する事を聞かれたりしているうちに、歯科衛生士として力になれる事はないかなと思い、介護職員の経験と歯科衛生士の経験を生かせる仕事を探しはじめました。

当時は、歯科衛生士が車を運転する所が多くて、私は免許がないので難しいなと思っていたんですけど、高輪会グループは運転免許がなくても、問題ないとの事だったので、デイサービスのスタッフとWワークで7~8年間パート勤務をして、5年前に正社員になりました。

歯科衛生士インタビュー訪問歯科診療画像3

20代のうちに外来(一般歯科)を離れる不安はありませんでしたか?

正直、最初は外来から離れる不安はありました。

歯科衛生士さんってスケーリングやSRPなどの技術スキルが求められる事があるので、感覚が鈍ってしまうんじゃないかと当時は悩んだ事があります。

ただ訪問歯科診療で働いているうちにやっぱりこの仕事が好きだし、私に合っていると感じたので訪問歯科診療の仕事ずっと働いていこうと思った時から不安に感じる事はなくなりました

また時代背景もあると思います。「2025年問題」(※)と言われているように高齢者がどんどん増えていく傾向にあり、
訪問歯科診療の需要が今後も高まり、必要性を強く感じたので外来に戻る事を考えなくなりました。

※「3人に1人」が65歳以上、「5人に1人」が75歳以上になる時代が訪れ、介護・医療費等社会保障費の急増が懸念される問題。

訪問歯科診療を取り入れている歯科医院の数は地域によって差がありますか?また今後増えていきますか?

現状では、訪問歯科診療を実施している歯科医療機関は少なく足りない状況で、地域によって訪問歯科診療を取り入れている歯科医院数には差があると思います。

関東や関西は訪問歯科診療を取り入れている所は多くなってきていますが、地域によっては訪問歯科診療を受けたい方や家族はいるけど、まだ訪問歯科診療の設備や制度が整っていないと感じます。

今後、訪問歯科診療の需要がより高くなっていくので、訪問歯科診療を始める所は増えていくと思いますし、歯科衛生士さんの必要性がますます増えてくると思います。

訪問歯科診療のやりがい、やっていてよかったことを教えてください。

担当していた施設で出会った80代女性の患者さんがいたんですが、この方は長年寝たきりで、こちらの言葉は聞き取れても、言葉を発するどころか意思表示をすることもできない状態でした。

その方が訪問歯科診療のケアを受けたことで元気になり、話すことができるようになったんです。

患者さんのご家族は言葉を聞くことなく、最期を迎えるのではないかと半ば諦めていたようで、
「まさか母と会話ができる日が来るなんて思いもしませんでした…本当にありがとうございました」
と感謝の言葉を頂きました。

患者さんが元気になり、ご家族の方から感謝の言葉をいただいたのも嬉しいですが、もし自分の両親が同じ状況だったと考えたら・・

私たちの仕事が、誰かの人生を、最後のステージを、より豊かなものに変えられる

これこそが訪問歯科診療に携わる歯科衛生士としてのやりがいと思います。

歯科衛生士インタビュー訪問歯科診療画像4

訪問歯科診療を受けた事で患者さんにそのような変化があるんでしょうか?

もちろん歯科だけじゃなく、歯科・医科・介護・ご家族のあらゆる関係者のチーム医療”必要になります。

歯科治療や口腔ケアだけじゃなく、摂食嚥下機能も診ていきます。必要に応じて嚥下内視鏡を使って検査し、食事の形態や介助方法や口腔ケア方法なども介護職員にアドバイスして、皆で協力して患者さんのケアを行いました。

その方は3ヶ月後には寝たきりの状態から椅子に座って自分で飲み物を飲めるまでに回復しました。

さらに、その翌月には歩行補助器を使いながらご自身で歩けるまでになりましたね。

働いていて大変な事を教えてください。またどのような工夫していますか?

日々小さい業務で面倒だなと思う事はありますが(笑)辛いなと思う事はないですね。

ただ初めて訪問歯科を経験する方は外来と違って、疾患により、意思疎通が取れない患者さんも多いのでコミュニケーションの取り方や口腔ケアを行う際に拒絶される事を戸惑う方はいますね。

聴力や視力が低下している患者さんが多いので、外来と同じ接し方をしてしまうと、患者さんに全然伝わっていない事が多いんです。その状態で急に歯磨きをしようとすると驚いてしまって、拒絶をされてしまうんですよね。

現場では、患者さんに最初に声をかける時はマスクを外して顔を見せるようにしています。マスクしていると表情もわからず、患者さんも不安になりやすいので、声のトーンに注意したり、手を握る、肩に触れるなどをして安心感を与えるようにしています。

ケアを行う上でそういった接し方を意識するだけで患者さんに受け入れてくれるかくれないか、とても大きく変わってくるなと感じます。

外来と訪問歯科診療で働いて感じた違いを教えてください。

外来も外来の良さがあると思いますが、歯科医師、歯科衛生士、ケアスタッフがそれぞれの職種でプロとして働き、協力し合っているので、外来で働いている時に比べて、本当の意味でのチーム医療を行っていると感じました。

また訪問歯科診療の場合は歯科だけじゃなく、色々な専門職と関われるので刺激となり、学ぶ事が多いです。

歯科医師の指示をただ受けるだけじゃなく、歯科医師に必要とされて、協力し合い、対等に働けるところも訪問歯科診療で働く楽しさのひとつだと思います。

また外来だと行動範囲も限られているし、スタッフと同じ空間にいる事が多いため、人間関係で悩んでしまうと長期的に働く事が難しいと思います。

訪問歯科診療の場合は施設にいったら、歯科医師は歯科医師、歯科衛生士は歯科衛生士の仕事がありますし、日によって先生が代わったりするため、適度な距離感で働けるんですよね。そのため、働くスタッフとトラブルになる事が少ないと思います。

歯科衛生士インタビュー訪問歯科診療画像5

どんなパーソナリティの方が向いていると思いますか?

訪問歯科診療で働く歯科衛生士さんって親の介護経験がある方や介護職で働いていた方も多いんですよね。介護を経験している方は意思疎通を取りにくい患者さんと話す事に慣れている方が多いので、接し方など経験が生かせると思いますよ。

逆にまったく介護の経験がない方でも、高齢者の方と話す事が好きという気持ちだけで全然良いと思います。

介護士ではないので介護のスキルは必要ないですし、口腔ケアや認知症の知識や対応など、働きながら必要なスキルは身につきますよ。

求められるスキルを教えてください。

コミュニケーションスキルと観察力が大切ですね。
話せない方もいるので表情をよめたり、今日は体調が良くなさそうだなと感じる力というか、それによって対応や処置が変わってくるのでとくに観察力は大事かなと思います。

今後、どのような働き方をしていきたいですか?

訪問歯科診療でずっと働きながら興味があることは後悔しないようにどんどん挑戦して、毎日楽しく生きていきたいですね。

このお仕事をしていることも関係あると思うんですが、明日、何があるかわからないので、日々悔いのないように過ごしていきたいと思っています。

歯科衛生士が転職・就職を考えたらここをチェック!!

渡辺さんが就職活動をするときや入職後に気をつけていたポイントをご紹介します!

面接時・見学時のポイント

私の時は見学の際、スタッフの接し方をよく見ていました。
先生が患者さんに対する接し方と、スタッフに対する接し方が違かったり、そういう所をしつかりみて、長く働けるのか考えていました。
あとは、仕事内容、お給料、勤務時間など自分の中で優先順位を決めてから、見学面接をした方がいいと思います

新人にアドバイス!ここを気をつけると仕事も職場関係もスムーズに!!

私は入職後、素直な受け答えができるように意識していました。

今は教える立場になることが多くなってきたんですが、間違っていることを指摘された時に言い訳をするんじゃなくて「すみません」「ありがとうございます」が言えるとか、当たり前のことのようで、できていなかったりすることもあるんですよね。

それができると人間関係がスムーズになると思います。

また、理不尽な事で指摘された時や意見がある時も、「すいませんでした。その時は、、」のように、一旦受け止めてから、理由や意見を言うようにするといいと思います。

ただ全部受け止めると悩んでしまうので、理不尽な事で指摘された場合は心の中で自分にとって良い事だけを取り入れて、他は受け流す事も大切ですね。

そうすると自分の成長にもつながるんですよね。昔は指摘されたら、すぐ言い返していたけど、今「はい」って一旦受け止められた、成長したなって。

編集後記

明るくあたたかいお人柄の渡辺さん。取材中、終始笑顔に包まれる現場でした。

私は訪問歯科診療での勤務経験がなかったので、実際にどのようなことを行っているのかよく知りませんでした。

体力も使いそうだし、大変そうだなと漠然としたイメージはありましたが...。

今回インタビューを通して、各分野のプロが皆で協力し、患者さんやご家族の方と深い関わりをもって働いている素敵なお仕事だなと思いました。
外来で働いている時とはまた違った楽しさややりがいが見つかるような気がしますね!

取材・文/シカカラ編集部 やぎ


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