求人サイトの条件面や給与明細を見てみると、「みなし残業代」や「固定残業代」と書かれている欄がある歯科衛生士さんもいるかもしれません。
今回は『みなし残業』について詳しく解説していきます。
みなし残業って?
みなし残業とは、下記のような制度になります。
みなし残業(固定残業)
例えば、下記のような歯科医院の場合。
歯科医院A
お昼休み : 13:00~14:00
勤務時間 : 9:30~19:00 (休憩1.5時間)
勤務時間は9:30~19:00の9.5時間で休憩が1.5時間のため、1日の労働時間は8時間になります。
しかし、診療後にいつも30分程度の片付け作業があり、ほぼ毎日残業が発生しているとします。
そこでみなし残業(固定残業)の制度の出番です。
あらかじめ一定時間分の残業代を給料に含めて支給する制度ですね。
残業が毎日0.5時間見込まれ、月の出勤日が20日だとすると、月の残業は10時間が見込まれます。
みなし残業の注意点。みなし残業に疑問を感じたらココを確認!
平成29年(2017年)7月7日に、最高裁判所でみなし残業代(固定残業代)についての判決が出て、7月31日付けで通達が出ています。
それによると、みなし残業代(固定残業代)の注意点は、下記になります。
注意点
- 残業代として支払われた部分と、それ以外がしっかり判別できること
- みなし残業(固定残業)時間よりも多く残業した場合は、その差額がしっかり支払われていること
時間外労働や休日労働などの割増賃金部分について、「労働時間数」や「金額」が詳しく明示されていない場合は、一度確認をした方が良いでしょう。
また、みなし残業(固定残業)時間を超過して残業をしているのに、超過分の賃金が支払われていない場合も、同様に確認しましょう。
みなし残業のメリット!
「みなし残業代として、月に20時間分は支払う」とされている場合。
その月の残業時間が20時間に満たない場合でも、20時間分のみなし残業代は支払われます!
逆に、忙しい月などで残業時間が20時間を超えてしまった場合、超えた分の残業代は、歯科医院が支払う必要があります。
※超えた分の残業代がしっかり支払われていない場合は、残業代の未払いが発生していることになり法律を違反することになってしまいます。
みなし残業時間の上限はあるの?
みなし残業代を「月に1,000時間分含む」のようになると、事実上、残業代は支払わないということになってしまいます。
このようなことを防ぐためにも、「固定残業時間の上限は、一般的に月45時間」と決められています。
※2019年4月から、月45時間を超える事ができるのは年6ヵ月に変更されました。
出典 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/000463185.pdf
また、みなし残業代は、時給換算した際に基本給部分が最低賃金を下回ることは許されません。
そして、最低賃金は法律で決まっています。
みなし残業代は基本給ではないので、みなし残業代だけが高額になりすぎて、基本給が低すぎるということは一般的には起きないようになっています。
みなし残業代の計算方法は?
みなし(固定)であっても、それは「残業代」です。
残業代は「1時間あたりの賃金の25%を上乗せして支払わなくてはいけない」と決められています。
常勤歯科衛生士の場合、月給を月の勤務時間(残業部分以外)で割って、時給を計算します。その時給に25%上乗せした金額が、1時間あたりの残業給与です。
例えば、下記のような歯科医院の場合。
歯科医院B
勤務日数 : 20日
基本給 : 208,000円
みなし残業時間 : 20時間
この歯科医院の1か月の労働時間は、8×20=160時間となりますね。
また固定残業代を含まない基本給が208,000円だったとします。
この場合、
基本時給は下記になります。
そして残業時間中の時給は、25%上乗せしなくてはいけないので、
となります。
1か月のみなし残業時間が20時間なので、
となり、給与明細の額は下記になります。
給与明細の額
みなし残業代(手当) : 32,500(円)
合計 : 240,500(円)
また、月の残業時間が20時間を超えた場合には、「20時間を超えた時間数×1,625円」が、プラスして支払われます。
20時間分は既に240,500円に入っているので、そこに追加される金額は、「20時間を超えた時間数分」になりますね。
※最高裁判所の通達では、この、「基本給」と「みなし(固定)残業代」の部分をしっかり分けて、労働者(歯科衛生士)が分かる形で伝えなくてはいけない、ということになります。
まとめ
みなし残業代(固定残業代)は、本来は働く歯科衛生士にとって有利な制度です。
みなし残業時間を超えなければ、そこまでの残業代は保証され、それを超えたら普通に残業代として支払われるからです。
歯科医院にとっても、「いつもこれくらい残業が発生するから、それなら先に払ってしまおう」とすることで、残業代の複雑な計算をやらなくて済むようになり、事務処理が簡単になるメリットがあります。
しかし、中には、
「私の医院はみなし(固定)で先に残業代を払っているから、残業がいくらあっても追加で支払わない」
という歯科医院も...。
何か不安があったりした場合は、労働のプロである社会保険労務士(社労士)に相談してみましょう。
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