退職/辞めたい

歯科衛生士が円満退職するための方法

投稿日:2015年6月24日 更新日:

歯科医院の円満退職のすすめ

 

(監修: 永島社労士事務所 永島篤史先生)

歯科医院での円満退職は難しい?

勤めている歯科医院を辞めるとき、大きく分けると、円満に退職できる場合と、円満退職できずにもめてしまう場合があります。

辞めたいけど、もめることを考えると気が引ける..
仕方がないときもありますが、もめるよりは円満に退職したいですよね。

シカカラDH求人では、年間5,000人を超える歯科衛生士さんの就職・転職の相談に乗っています。また、シカカラDH求人を運営している株式会社グローマスは、歯科医院のコンサルティングも行っています。

歯科衛生士側、歯科医院側の両方を見てきてわかった、円満退職の条件をご紹介していきます。

スムーズな円満退職をするために院長の納得度を上げよう

辞めるというのは、法律的には「労働契約の解約」という話になります。

歯科衛生士側が辞めたいと言う場合は、解約するのが歯科衛生士で、解約されるのが歯科医院です。
※解雇(クビ)の場合は、解約するのが歯科医院で、解約されるのが歯科衛生士です。

解約される側が納得していれば、もめることはなく円満な退職になりますが、納得していなければ、場合によってはもめることになってしまいます。

円満(もめない)と円満でない(もめる)は、
退職に対して院長がどれくらい納得しているかによって変わってきます。

院長や理事長の「納得度」は、何によって決まるの?
もちろん、さまざまなケース、理由があるので、一概には言えませんが、このようなものがあります。

これらを総合したものと、院長の性格・考え方、によって決まる場合が多いようです。

円満退職する方法を詳しく説明していきますが、その前に相手側の立場と心理を少し理解しておきましょう。

意識の違い

院長は経営者です。経営者は上手くいったらいっただけお金が入って嬉しいですが、その分、うまくいかなかったらそれだけお金が入りません。雇用は法律的にも全く守られませんし、失業保険はもらえません。

さらに、歯科の場合は、ほとんどの院長が開業時に、数千万円~1億円近くの借金をしています。

なので、医院が失敗したら多額の借金を抱えて、路頭に迷うことになります。家族がいても関係ありません。

一方、従業員(ここでは歯科衛生士)は、医院の経営が上手くいっても、多少給与が上がる程度、医院が失敗した場合でも転職ができたり、医院がつぶれてしまっても失業保険が出たりするので、雇用の安定という部分では守られています。

医院が長いことうまくいっていて、お金がいくらでもある院長であれば別ですが、借金が残っていたり、一生暮らしていけるほどの貯金があるわけではない院長は、その歯科医院がうまくいくことに関しては、命を懸けていると言っても過言ではありません。

その覚悟度合いの違いが、納得感の違いを生むベースでもあります。

職業選択の自由

歯科衛生士として歯科医院で働いたことがある方は分かると思いますが、働いている間はかなりの部分で雇用者(院長や理事長)の立場の方が強く、幅広い権利が法律でも認められています。

仕事内容、求める業務のレベル、給与などを決める決定権が院長にはあります。

しかし、「仕事をする・辞める=仕事を選ぶ」ことに関しては、働く側の歯科衛生士の方が、法律では強く守られています。

労働基準法や民法などの法律では、働く側の歯科衛生士は、自分の意思で自由に辞めてよいことになっていますが、院長が自由に歯科衛生士を辞めさせる(解雇)は、例外を除き、ほぼ不可能となっています。

これは、「労働者(歯科衛生士)は、職業選択の自由を保証される一方で、雇用者(院長)の都合で好きに解雇されてしまうと生活が脅かされる」と考えられているからです。

院長が突然、「明日から来なくていい」と言い、それが認められてしまうと、働く側は給与が得られず、生活に支障をきたします。
それを保護するために労働基準法などの法律があるのですが、院長からすれば、「辞めさせるのはできないのに、辞めるのは自由、というのは納得できない」と考えるのも、自然と言えます。

働いている人数

たとえば、社員が1万人いる会社で、1人が辞めても、その影響はわずか0.01%です。

しかし、スタッフが10人しかいない歯科医院のような小規模事業所で1人辞めてしまうと、影響は10%にも及びます。

最近は、法人化、分院展開を行い、スタッフ数が50人を超える歯科医療法人も珍しくなくなりましたが、まだまだ多い個人経営の歯科医院では、1人辞めることの影響がとても大きいのです。

これらの理由から、歯科医院を含む小規模事業所では、退職というのはそもそも揉めやすいものとなります。

なるほどねー。
では、院長の納得度を左右するポイントを詳しくみていきましょう。

退職の理由

誰がどう見ても退職せざるを得ない場合は、納得しやすいです。

たとえば、

  • 引っ越し
  • 出産
  • 介護

などです。

一方、「他人から見て、必ずしも退職しなくてはいけない」理由ではないと、場合によっては納得しづらいこともあります。

たとえば、給与、休み、勤務時間、忙しさ、人間関係に関する不安や不満などです。

辞める側の歯科衛生士としては、「必ず退職しなきゃいけないくらいの理由」と考えるのも自然ですが、雇用者側からすると「少しは我慢してくれてもいいのでは…」という考えに至りがちな部分です。

辞めたい理由ってこういうのが多くない?
そうですね。もちろん、医院側もスタッフが働きやすいように改善する努力は必要です。
しかし、スタッフの生活を支えている立場あり、患者さんが滞りなく治療を受けられるようにする責任もあるので、そう考えてしまうのでしょうね。

勤務した期間

辞めようと思っている歯科医院で勤務している期間が長ければ長いほど、納得してもらいやすい傾向にあります。

『今までうちの医院でがんばってくれてありがとう』という気持ちが芽生えるからです、

逆に、歯科衛生士が医院に貢献し始める前の教育期間中だったりすると、「給与は支払いつつ、何もしてくれなかった」となり、納得するのはなかなか難しくなります。

一概には言えませんが、数日間で辞めるよりは、何か月も教育して、そろそろ戦力になるなー と思っている時期が一番納得いかなかったりします。

もし自分が経営者だったら、どう思いますか?
たしかに経済的にも精神的にもダメージをうけるね。

事前相談の有無

早いタイミングから、事前に院長に相談している場合は、納得してもらえる可能性は高まります。
3か月後に辞める、6か月後に辞める、というプランを伝えておくと、院長側が新しい人を採用する気持ちに切り替えられる場合があるからです。

1週間後辞めます、などになると、普通に考えて、どう考えてもこの短期間で採用は無理!と考えてしまうので、「それならもっと早く言ってよ…」となりがちです。

勤務実績・態度など

歯科衛生士自身が、まじめに仕事していて、その仕事ぶりを評価されていた場合、納得度は高まります。

まじめでがんばってくれて、スキルもある歯科衛生士が辞めると言うのだから、ちゃんとした理由があるのかも、と考える傾向があるからです。

逆に、不真面目だったり、何もできない、と思われていたりすると、迷惑ばかりかけられた… となり、納得しづらくなります。

歯科医院の状況

歯科医院のスタッフ数、特に歯科衛生士の人数に余裕がある場合は、納得してもらいやすいです。

仮に歯科衛生士が1人辞めても、ちゃんと日々の診療はまわるので、仕方ないか、となりやすいです。

逆に、日々の診療が今の人員でカツカツなところで、辞めたい、と言われてしまうと、頭では理解しつつも気持ち的に「この状況でそれ言う!?」となってしまいがちのようです。

早めに退職の意思を伝えることや「この状況で大変申し上げにくいのですが~」などのクッション言葉を入れて伝えると良さそうです

引き継ぎへの意欲、準備

歯科衛生士に限らず、いきなりスタッフが辞めるとなると、医院は大変です。

残るスタッフに、引き継ぎをちゃんとする意欲があるか、辞めるとしてもできるだけ迷惑をかけないように考えてくれている、と思われると、納得感は上がります。

申し訳ない気持ち

法律上は、雇用者と被雇用者は対等な関係です。状況によって、認められている権利に違いはありますが。提供している労働力の対価として賃金(給与)をもらっている関係です。

法律上、労働者は退職の意思を告げてから2週間経てば、特に条件なしで辞められると決められているので、円満かどうかを気にしないのであれば、特に謝る必要はありません。

しかし「辞めることでご迷惑をおかけして申し訳ありません」という気持ちを持ち、伝えた方が相手の納得度は高まります。

性格や考え方

今までの、納得度を決めるポイントを総合的に踏まえつつ、最後は院長の性格や考え方で決まります。

温厚、温和な院長であれば、多少のことではもめないでしょう。円満退社につながる場合が多いです。

法律を知っていたり、いわゆる「大人の対応」を心得ていたり、気弱な院長だったりすると、仮に納得はしていなくても、よほどのことがない限り、表面的にはもめないケースが多いようです。

ただ、実際には「円満」からかなり遠い状態なので、困ったときに頼ったりするのは難しいでしょう。

感情的になりがちで、自分の思い通りにならないとすぐ激昂したり怒鳴ったりする院長だと、逆によほどのことがない限り必ずもめる、という場合もあるようです。

その場合は、諦めて法律的対応をたんたんと進めることを覚悟しましょう。

円満退職についてまとめると…

こんな感じです。

円満退職の割合画像

円満に退職するには

色々なポイントを述べましたが、円満に退職する可能性を高めるためには、日頃から仕事をしっかりやり、院長に自分を理解してもらっておくことだと思います。

身もふたもない話ですが、感情がからむ話になるので、小手先のテクニックではなく、日々の積み重ねが大事になります。

円満に退職できないときはどうしたらいい?

円満に退職できず、もめてしまった場合はどうするべきでしょうか?

これは、人によって対応パターンが分かれます。

・もめるのは精神的にもツライので、院長の言う通りにする(いわゆる泣き寝入り)
・法律上は正しいので、予定通り辞める

どちらを選ぶかは、その人次第です。

どちらを選ぶにせよ、まずはしっかりと院長と話し合いを重ねるべきでしょう。

院長は上司であり経営者でありますが、働く歯科衛生士も自分のことはしっかり自分で考えてベストな選択をする、という覚悟を持つことは、非常に大切です。

なお、それでももめてしまったときは、ごくまれなケースを除き、労働者側の意見が通るので、自分だけで対応するのが大変なのであれば、労働基準監督署や社会保険労務士か弁護士に相談しましょう。

※ごくまれなケースとしては、
有期雇用期間中の退職の場合、途中でやめることで医院側の損害が明確な場合は、医院から損害賠償を請求される場合があります。

一般的には、損害額の算定が困難だったり、損害賠償請求の労力に比べてとれる額が小さかったりするので、弁護士などから「やめたほうがいい」と言われるようです。
しかし、担当制で数か月先まで予約がびっしりで、代わりの歯科衛生士がいない場合などには損害賠償請求がくる可能性もあり得ます。

いずれにせよ、もめた場合は、労働問題のプロである労働基準監督署や社会保険労務士か弁護士に相談しましょう。

(監修: 永島社労士事務所 永島篤史先生)

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