ここでは、歯科衛生士の就業場所である歯科医院に欠かせない歯科医師の、人数や働き方の現状について最新のデータをもとに見ていきます。
※調査の内容によっては、最新のデータが2020年より前のものもあります。
歯科医師の人数について
歯科衛生士として歯科医院で働く場合、法律で定められている通り、必ず歯科医師もいます。
では、歯科医師の人数はどのように推移しているのでしょうか。
最新の厚生労働省の統計(*1)では、働いている歯科医師の人数は104,908人となっていて、医療機関で働いている歯科医師は101,777人です。10万人以上の歯科医師が働いていることになります。
*1: 厚生労働省発表 「平成30年(2018年) 医師・歯科医師・薬剤師調査の概況」より
歯科医師の人数の推移
歯科医師人数は、統計データがある1968年から現在に至るまで増え続けています。
以下のグラフは、2002年から2018年までの歯科医師数をグラフにしたものです。
2002年に約9.2万人だった歯科医師は、2018年に10.4万以上となり、20年間で約1.1倍くらいに増えています。
男性歯科医師が多いものの、女性歯科医師も増えている
歯科医師の男女比は、1998年 男性83.66%、女性16.3%でした。2018年は、男性81.2%、女性24.1%となっています。
グラフを見ても明らかなように、歯科医師の女性比率は年々増えています。
過去は少なかったが今は増えている、ということなので、女性歯科医師は男性歯科医師に比べて若い方が多くいます。
歯科医師の勤務状況は?
歯科医師が働いている場所と働き方を大きく分けると、
歯科診療所(歯科医院)を開業している(*3)
歯科診療所で雇われて働いている
病院で働いている(*4)
の3パターンになります。(*5)
*3: ここでは、開業を「個人歯科診療所の開設者もしくは医療法人の代表者」と定義しています。
(2軒以上運営している医療法人の理事長以外の分院長は、勤務医としてカウントしています)
*4: 「病院」とは、20床以上の入院設備を有する医療機関。「診療所」は、19床以下の入院設備を有する「有床診療所」と入院設備を持たない「無床診療所」に分けられ、歯科医院のほとんどが「無床診療所」です。
*5: 病院を開業している歯科医師もいますが、2014年で24人とごく少数なので、ここでは「病院で働いている」に入れています。
開業している歯科医師を「開業医」、病院や歯科診療所で雇われて働いている歯科医師を「勤務医」と言ったりします。
2018年時点だと、
歯科診療所を開業している歯科医師(開業医): 58,653人
歯科診療所で雇われて働いている歯科医師: 31,452人
病院で働いている歯科医師: 11,672人
となっており、歯科医師の中では開業医が最も多くなっています。
開業医は男性が多い
歯科医院を開業している歯科医師(開業医)は、総数で58,653人ですが、男女の内訳をみると、男性53,232人、女性5,421人です。
歯科医師全体に占める女性の割合が23.8%なのに対し、開業医に占める女性の割合は約9%となっており、女性歯科医師は男性歯科医師に比べて開業しない傾向にあるようです。
これは、結婚・出産などのライフイベントや、その後の育児を考えて開業を敬遠する向きがあると考えられます。
歯科衛生士や歯科助手の方の中には、「女性院長は合わない」という考えの方もいます。
逆に、院長が女性でスタッフも全員女性という歯科医院もあります。
誰しも色々な経験をした結果、合う・合わないはありますので、自分の合う職場を探すのが一番かと思います。
もし院長が女性の職場で働きたいと考えた場合、そういう歯科医院は少ないので、自分で探そうとすると少し大変かもしれません。
歯科医師過剰問題?
最近インターネットや雑誌などの記事で、「歯科医師過剰問題」というキーワードが、出てくることがあります。Wikipediaでも項目が作られています。
適正な歯科医師数が何人かというものがまずあり、それに比べて多ければ過剰、少なければ不足と言えます。
平成26年(2014年)10月に日本歯科医師会が発表した『歯科医師需給問題の経緯と今後への見解』という文書には、「歯科医師数は上限82,000人が望ましい」との記載があります。(*6)
*6: ただ、この文書中にも「できるだけ中立的、客観的に算出したが、適正な歯科医師数を決めるのことは、さまざまな要因に左右されるとても難しいことなので、絶対正しいと強く言うことはできない」といった主旨の文章もあります。
仮にこれを正しいとすると、現在は10万人を超えているので適正人数よりも少し多い状態になっていると言えるでしょう。
新規歯科医師数は、ここ数年は大きく減少
年によってばらつきはあるものの、2013年くらいまでは約2,500人くらいが歯科医師国家試験に合格して、新しく歯科医師になっていました。(この20年で最も多かったのが、2001年の3,125人)
ただ、ここ数年はずっと2,000人前後となっており、2016年・2017年は共に2,000人を割り込んでいます。
最新の2020年の結果では、受験者数3,211人に対して合格者は2,107人でした。合格率は65.6%です。
国家試験に合格して歯科医師になりたての人がいきなり開業することはまずないので、そのほとんどが少なくとも開業するまでの数年を勤務医として働くことになります。
近年では新規合格者が少ないので、もしかしたら「勤務医が足りない歯科医院が増える」という状況になるかもしれません。
今は歯科衛生士が足りないという声が多いですが、歯科衛生士数の増加のペースは落ちていないため、いつかは適正な人数になります。
歯科医師もまだ増えていますが、国家試験の新規合格者がこのまま減り続けると歯科医師は減っていくことになります。
そうなると、「歯科衛生士は足りているけど歯科医師(勤務医)が全然足りない」という歯科医院が今後は増えてくるかもしれません。
雇用主である歯科医師は、歯科衛生士が足りないから誰でも採用をするわけではなく、技術と経験を積んだ優秀な歯科衛生士と一緒に働きたいと思っています。
歯科衛生士の方も「足りないと言われている=売り手市場」のうちに、しっかりとスキルを身につけていくことが重要だと思います。