「歯科衛生士法」が昭和23年に制定されてから、これまで歯科業界の動向に合わせて様々な変化をし続けています。
また、医療技術は日進月歩(どんどん進歩すること)で発展しているので、歯科衛生士に必要とされる役割や業務範囲も広がり続けています。
歯科医療はチーム医療でもあるので、自分の役割や業務について理解しておくことはとても重要ですよね。
歯科業界の流れと同時に、歯科衛生士の業務拡大や可能性などを紹介していきます。
歯科衛生士の資格・業務についての変化
「歯科衛生士法」に関する変化について紹介をすると、
- 資格取得に必要な年数
- 「歯科衛生士法」の内容改正
が、大きな変化になるかと思います。
資格取得に必要な年数の変更
修業年数とは、歯科衛生士資格を取得するため(受験資格を得るため)に、必要な勉強をしなければいけない期間です。
「歯科衛生士法」制定当時は、修業年数1年でしたが
- 昭和58年 修業年数2年へ変更
- 平成16年 修業年数3年へ延長可能
- 平成24年 修行年数3年に全統一(2年間制度廃止)
と、資格取得までの修業年数が変わってきました。
「歯科衛生士法」改正
これまで、法の記載表現など小さな改訂などもありましたが
平成26年に改正された一部に、歯科衛生士法 第12条が以下の通り改正となりました。
歯科医師(歯科医業をなすことのできる医師を含む。)の直接の指導の下に、歯牙及び口くうの疾患の予防処置として左に掲げる行為を行うことを業とする女子【改正後】
歯科医師(歯科医業をなすことのできる医師を含む。)の指導の下に、歯牙及び口くうの疾患の予防処置として左に掲げる行為を行うことを業とする者
(※改正箇所※ 「直接の」削除/「女子」を「者」と記載変更)
歯科医師から指導や指示を受けていれば、直接の立ち合いがなくても、患者さんの予防処置ができるようになったので、自分のペースで業務ができるようになりました。
また「女子」という記載を変更することによって、性別による職の限定さが薄れるようになりました。
歯科衛生士の役割は広がっている
歯科衛生士の本来の業務は予防処置に関する業務と、歯科医師の診療補助となりますが、保険診療でない自由診療(保険適応されない治療)も歯科業界では増えてきているため、歯科衛生士の役割や働き方にも広がりがでてきています。
審美歯科での歯科衛生士業務
「審美歯科」とは、むし歯や歯周病など問題がない歯を、保険対象外で歯を整えたり、綺麗にする治療になります。
問題ない歯を、敢えて治療をするので保険は適用されず、保険対象外となります。
治療の希望する患者さんの心理にあるものは主に「美」や「コンプレックス」が多いです。
テレビを見ると、歯並びが悪い・歯の色が悪い・黄ばんでいる芸能人は少ないですが、今は芸能人だけでなく一般の人も「美」の1つに「歯」を意識して、積極的な治療を行っています。
そのため、審美歯科で歯科衛生士が求められる役割も多様になってきました。
【例1】ホワイトニング
認定歯科衛生士の1つに「ホワイトニングコーディネーター」があります。
ホワイトニングは歯を白くするためにおこなう、保険適応外の自由診療になります。
ホワイトニングには、大きく分けて2種類あります。
「オフィスホワイトニング」…歯科衛生士が患者さんの歯に、専用薬剤塗布と光照射を定期的に実施する業務です。
「ホームホワイトニング」…マウスピースを使用して自宅でできるホワイトニングで、患者さんに薬剤の使用方法や注意点について説明を行ったりします。
【例2】PMTC
PMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)とは、歯科医師や歯科衛生士などの有資格者が、専用の機械を使用して、歯垢や着色汚れを除去し、歯を綺麗にクリーニングすることです。
保険診療で実施できる処置でもあります。
保険PMTCと自由PMTCの大きな違いは「むし歯・歯周病になっている歯か否か」ですが、 予防を目的としている自由診療は、
- 処置時間が長く、1つ1つの処置が丁寧で質が高い
- 通院回数が保険治療に比べ少なくて済む
- 専任歯科衛生士のサポートがついてアドバイスを受けられる
など、保険治療の内容と少し違ってきます。
【例3】完全予約制・担当制で患者さんをサポート
患者さんとの信頼関係を構築する目的もあり担当する患者さんが決められ処置・サポートを行うところもあります。
自由治療の患者さんは、現状より良くしたいという治療意欲と意識が高いので、歯科衛生士に対して期待が高いので、アドバイスも浸透しやすいです。
また、歯科衛生士と患者さんの関係性が築きやすく、仕事にやりがいを感じ、歯科衛生士としての資格を充分に活かせていると実感できる人も多いようです。
働く場所は歯科医院・病院だけではなくなってきた!
このように「審美歯科」の診療をメインにした歯科医院も増えてきていますが、最近は「美容外科クリニック」でも歯科衛生士が働ける職場として増えてきており、需要が高まってきています。
訪問歯科での歯科衛生士業務
訪問歯科とは、外来で受診するのが難しくなった高齢者の自宅や施設へ歯科医師と歯科衛生士が出向き、診療をすることです。
診療に必要な歯科用医療器具が入っている「ポータブルユニット」というものを持って、歯を削ったり、入れ歯の調整や口腔ケア(歯に付着している汚れを除去)などを行います。
高齢化が進む日本では、在宅医療を必要としている患者は増え続けているので、国の医療課題の1つとしても取組みが今後強化されていくことが予想されます。
比較的外来より未経験でも採用されやすい傾向にあるため、日本の医療を支える重要な業務の1つと言えます。
参考
臨床から離れた場で活躍する
歯科衛生士の経験と実績を積んでいくと、臨床以外でも働ける幅が広がるようになります。
現場のスタッフだった自分がレベルアップし、指導者の道を選ぶ人も増えてきています。
【例1】フリーランスとして後輩育成に力を入れる
フリーランスとは、主に個人で仕事・活動をしている人です。
最近はフリーランスとして働く歯科衛生士も増えはじめているので、歯科医院や歯科衛生士専門学校からの要望に応じて仕事をしています。
自分の技能や特技を活かして働くことができるので、仕事に制限はなく自分に合った仕事ができます。
【技能指導や人材育成のプログラムを用いてセミナーを開催】
歯科衛生士業務に必要な技術を実践し指導をする仕事です。自分が積み上げた経験を十分に発揮できます。
参考
【例2】教員として指導をする
歯科衛生士業務をする現場から、教育をする現場へ変えて、指導者になる道もあります。
同じ歯科衛生士でも、現場で求められることと、教員で求められることはまた違ってくるので、指導者という立場であっても学ぶことや身につけなければいけないことはたくさんあります。
その分、新たなスキルを身につけることができます。
参考
教育現場に必要なことを、歯科衛生士を目指す学生の立場になって考え、日々教育指導に取り組んでいる歯科衛生士です。
臨床から離れる不安や教員を続ける理由も聞いています。
【例3】一般企業に就職する
歯科衛生士の就職サポートを行っている紹介会社では、元歯科衛生士がキャリアアドバイザー(就職に関する様々なサポートをしてくれる担当者)として働いているところもあります。
悩んでいる歯科衛生士のアドバイザーとして、自分の経験を活かし仕事にしている人もいます。
また募集は少ないですが、歯科材料や歯科機器を扱っている会社での営業もあります。
商材を利用している現場で働いていた者として、利用者の目線に立って仕事ができることが期待されます。
歯科衛生士として理想的な働き方をするために
紹介した通り、臨床経験を活かして様々な形で活躍する歯科衛生士が増えてきています。
歯科治療への意識が高まっているため、歯科衛生士の役割はこれからも広がり続けます。
仕事の幅が広がれば、自分の働きやすさに合わせて選べる求人の幅も広がることになります。
しかし、具体的にどうやって、どんな風に仕事の幅を広げていくかは、自分の歯科衛生士の経験と能力が基盤になります。
歯科衛生士として活躍しながら働きやすさも求めていくために、歯科業界の動向は常にキャッチしておくと良いでしょう。
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